【世界陸上2022男子マラソン】オレゴンで示された世界との距離

【世界陸上2022男子マラソン】オレゴンで示された世界との距離

世界の頂点を目指して戦う、42.195kmの真剣勝負。


世界陸上2022男子マラソンでは、日本勢がそれぞれの想いを胸にオレゴンの地を駆け抜けました。

大会新記録が生まれるなど、ハイレベルな戦いが繰り広げられる中、日本代表選手たちはどのような走りを見せ、何を得たのでしょうか。


この記事では、日本代表3選手の結果とレースの詳細、そしてその後の成長と東京2025世界陸上へ向けた展望をまとめてお届けします。

世界陸上2022男子マラソン|日本代表3選手の走りを振り返る

日本記録保持者の鈴木健吾選手が欠場という波乱のなか、世界陸上2022男子マラソンには西山雄介選手と星岳選手の2名の日本代表が出場しました。

初の世界大会に挑んだ彼らは、世界の強豪とどう戦い、どのような経験を持ち帰ったのでしょうか。

この章では、オレゴンの舞台で日本代表3選手が見せた走りと、タミラト・トラ選手による大会新記録の快走を振り返ります。

西山雄介と星岳が出場、鈴木健吾はコロナで無念の棄権

2022年のオレゴン世界陸上男子マラソンには、日本代表として西山雄介選手(トヨタ自動車)と星岳選手(コニカミノルタ)の2名が出場しました。

本来であれば、マラソン日本記録保持者の鈴木健吾選手(富士通)も代表に選ばれていましたが、選手村内でPCR検査を施行したところ、新型コロナウイルス検査陽性と判断され、無念の棄権。

一方で、初の世界陸上代表として名を連ねた西山雄介選手と星岳選手は、この大舞台でどのような走りを見せるのか注目を集めました。

西山雄介は13位でフィニッシュ|世界陸上で日本歴代最高タイム

西山雄介選手は、初マラソンとなった別府大分毎日マラソン2022で優勝し、2時間7分47秒の大会新記録を叩き出して世界陸上代表の座を勝ち取りました。

オレゴンの地では、その安定した走りを発揮し、序盤から先頭集団に位置してレースを進めました。

30km地点を過ぎたあたりでペースが急激に上がると、32km手前で集団から遅れを取り始めます。

それでも西山雄介選手は追走をあきらめず、地元アメリカのスター選手であるゲーリン・ラップ選手らとともに粘りの走りを展開。

最終的には2時間8分35秒の好タイムで世界陸上における日本人選手として過去最高の記録を打ち立てました。

しかし結果は13位と目標の自己ベスト更新と入賞を逃し、2度目のマラソンを終了。

ゴール後には「世界の壁は高いが、上を向いて世界と戦いたい」と語り、確かな手応えと課題を胸に次なる挑戦を見据えていました。

星岳は38位で完走|悔しさを糧に次を目指す初代表レース

星岳選手も、初マラソンとなった2022年の大阪マラソンでいきなり優勝を果たし、2時間7分31秒という初マラソン日本記録を樹立した実力者です。

その勢いのまま世界陸上代表に選出され、オレゴン大会では初の世界戦に挑みました。

レース序盤は落ち着いたペースで展開し、星岳選手も冷静に集団の中で位置取りを保っていました。

しかし、気温18度と好条件だったにもかかわらず、29km手前から先頭集団から徐々に遅れ始めます。

30kmを過ぎると先頭のペースが一気に上がると先頭集団から脱落、終盤もペースが落ち苦しい展開に。

結果は2時間13分44秒で38位。

満足できる順位ではなかったものの、星岳選手は「チャレンジできた部分はあった」と語り、内容の濃い経験を手にしたことに手応えを感じている様子でした。

タミラト・トラが大会新で優勝|高速レースの展開が鍵に

世界トップレベルの実力を見せつけたのは、エチオピアのタミラト・トラ選手でした。

レースは序盤こそスローペースで始まったものの、気温18度という好条件のもと、30km以降にペースが一気に上昇。

33km過ぎにトラ選手がスパートをかけると、そこからは独走態勢に入りました。

34km、35kmのラップはそれぞれ2分43秒、2分47秒という驚異的なラップを刻み、その勢いのままフィニッシュ。

2時間5分36秒という大会新記録で圧巻の優勝を飾りました。

この勝利が示すように、近年の世界マラソンは「戦術」と「スピード」が両立するハイレベルな展開となっており、日本勢にとってはさらなる強化が求められる現実を突きつけられる結果となりました。

なお、この大会の2年後に行われた2024年のパリオリンピックでは、同じくタミラト・トラ選手が2時間6分26秒でオリンピック記録を更新しており、彼の圧倒的な実力が世界の舞台で証明される形となりました。

世界陸上2022男子マラソンの経験から見える日本勢の課題と希望

オレゴンでの挑戦は、日本代表選手たちにとって多くの学びと課題を残しました。

世界のトップと対峙したことで見えた「壁」と、それを乗り越えるための歩みとはどのようなものだったのか。

この章では、世界陸上2022男子マラソンで得た経験と、それを糧に進む日本勢の現在地を解説します。

西山雄介が語った世界の壁とその後の歩み

初の世界陸上に出場した西山雄介選手は、レースを通じて“世界との距離”を身をもって体感しました。

結果としては日本人歴代最高タイムを記録しながらも、本人の口から語られたのは、悔しさと明確な課題。

そしてその経験は、以降のレースでの成長と再起につながっていきます。

ここでは、オレゴン大会での走りと、その後の歩みを振り返ります。

西山雄介が世界陸上2022で味わった悔しさと手応え

西山雄介選手は、2時間8分35秒で13位に入り、日本人として世界陸上男子マラソンで過去最高タイムを記録しました。

日本代表としての結果としては十分に誇れる内容でしたが、世界のトップと競り合える走りだったかといえば、そこにはまだ明確な差がありました。

レース後、西山雄介選手は「気象条件が良かったので、このくらいのタイムは出ると思っていた」と冷静に自己分析をする一方で、「肝心なところで勝負できなかったことが課題」と悔しさもにじませました。

30km以降にペースが上がることを想定し、前方で構えていたものの、それまでのペース変動によって体力を削られ、終盤のスパートについていくことができなかったと振り返っています。

ただ、憧れのゲーリン・ラップ選手と競り合えたことについては「良い経験ができた」と前向きに語っており、世界の舞台で得た刺激は大きな自信と課題の両方をもたらすものとなりました。

MGCでの西山雄介の苦戦と、その先に見えた可能性

オレゴンでの世界陸上を終えた西山雄介選手は、次の目標にパリ五輪出場を掲げ、MGC2023に挑みました。

しかし、レースは思うようにいかず、2時間17分49秒で46位という結果に。

引退も考えた」と語るほど、大きな挫折となりました。

それでも西山雄介選手はそこから復活を遂げます。

東京マラソン2024では自己ベストとなる2時間6分42秒を記録して日本人トップ。

さらに福岡国際マラソンでは2時間6分54秒で2位に入り、2時間6分台を安定して出せる選手として存在感を示しました。

2025年の大阪マラソンはコンディション不良で欠場となったものの、実力面での成長は誰の目にも明らかです。

惜しくも今回の世界陸上代表には選出されなかったものの、西山雄介選手の今後に向けた可能性は広がっています。

数々の試練を乗り越えた経験と着実な結果は、今後の日本マラソン界を牽引する力となるはずです。

星岳が見つけた成長のヒントと新たな目標

初の世界陸上となった星岳選手は、記録2時間13分44秒・38位という結果に終わりました。

本人も「最後、力が出なかった」と語るように、レース後半での失速は悔しさが残る内容となりました。

特に、給水地点でのペース変動に対応しきれなかった点や、後半での粘りに欠けた点は今後の大きな課題として受け止めています。

しかし、星岳選手は「チャレンジできた部分はあった」とも話しており、この経験を前向きに捉えていることが印象的です。

日本代表として向き合っていた時間はプラス」と語るその言葉からは、大舞台での責任感と、それを乗り越えようとする意志の強さが感じられます。

次なる目標には「入賞、メダルを目指したい」と明言しており、この敗戦を確実に糧として、自身の成長につなげていく覚悟が伝わってきます。

東京2025世界陸上に向けて|オレゴンで得た教訓をどう生かすか?

オレゴン大会を通じて、日本勢は世界の舞台で求められるレベルの高さを肌で実感することとなりました。

気温18度という比較的良好な条件の中で、30kmを過ぎたあたりからレースが一気に動き、トップ選手たちは2時間5分台という高速決着を演出。

厳しい展開の中、西山雄介選手は粘り強い走りで13位に入り、日本代表として存在感を示しました。

星岳選手は後半に失速したものの、世界と戦ううえでの課題や適応の難しさを体感する貴重な経験を得ています。

東京2025世界陸上では、開催国としての地の利を活かしながら、これまで以上に高いレベルでの入賞や上位進出が求められます。

オレゴンで得た教訓を一過性のものとせず、課題を積み上げ、走りの質へと昇華させられるかどうかが、日本マラソン界の未来を大きく左右するでしょう。

まとめ:世界陸上2022男子マラソンから見えた日本勢の現在地と未来

  • 西山雄介選手が世界陸上で日本歴代最高タイムを記録
  • 星岳選手は悔しさを糧に成長の兆しを見せた
  • トラ選手の圧巻の走りが、世界と日本選手の実力差を浮き彫りに

世界陸上2022男子マラソンは、日本代表選手にとって貴重な学びの場となりました。

西山雄介選手は健闘を見せ、日本勢の可能性を示す一方で、トップ選手との壁も明らかに。

星岳選手も課題を抱えながらも、今後に期待の持てる走りを経験しました。

次なる舞台・東京2025世界陸上に向けて、オレゴンで得た教訓がどのように活かされるか注目されます。

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