ロンドン世界陸上2017 女子マラソン代表を振り返る|安藤友香ら3人の挑戦と課題

ロンドン世界陸上2017 女子マラソン代表を振り返る|安藤友香ら3人の挑戦と課題

あの日、ロンドンの街を駆け抜けた3人の日本代表。

その走りは、希望と葛藤、そして大きな課題を私たちに残しました。

ロンドン世界陸上2017女子マラソン

その舞台に立った安藤友香選手、重友梨佐選手、清田真央選手が背負ったものとは何だったのでしょうか。

今も語り継がれるレース展開、結果の重み、そしてそこから導かれる教訓。

2025年、自国開催となる東京世界陸上を前に、あの大会を振り返ることは大きな意味を持ちます。

この記事では、ロンドン世界陸上2017女子マラソンの代表選手たちの背景レースの展開、そして未来への課題と希望について詳しく解説します。

ロンドン世界陸上2017女子マラソン、日本代表に選ばれた3選手とは

ロンドン世界陸上2017の女子マラソンには、初代表と五輪経験者が並ぶ3人の日本代表選手が選出されました。

それぞれの代表入りの背景や注目ポイントには、日本マラソン界の希望と課題が見えてきます。

この章では、安藤友香選手・重友梨佐選手・清田真央選手の代表選出の理由を解説します。

注目の初代表、安藤友香選手の選出理由

安藤友香選手は、名古屋ウィメンズマラソン2017での初マラソンながら2時間21分36秒という快走を見せ、当時の日本歴代4位のタイムを記録しました。

この走りにより、日本陸連の派遣設定記録2時間22分30秒を突破し、ロンドン世界陸上2017の代表に即座に内定

安藤友香選手のレースは、リオ五輪銀メダリストのキルワ選手に積極的に食らいつき、30km手前で並走するなど、初出場とは思えない堂々とした走りを見せました。

力みのない「忍者走り」とも称される独特のフォームで、終盤までしっかりと耐え抜いた姿は、多くの関係者に鮮烈な印象を残しました。

ロンドン五輪代表・重友梨佐選手が再び世界へ

重友梨佐選手は、2012年ロンドンオリンピックの日本代表として世界の舞台を経験し、2015年の世界陸上北京大会に続き、2017年ロンドン大会でも2大会連続で世界陸上の代表に選出されました。

選考レースとなった大阪国際女子マラソンでは、2時間24分21秒のタイムで見事に優勝し、その実力を改めて証明しました。

ベテランとしての安定感と、暑さに強い走りが評価され、日本代表の一員として再び世界の大舞台に挑むことになりました。

しかし、このレースが、重友梨佐選手にとって現役最後のマラソンとなり、日本女子マラソン界を支えてきた競技生活に30歳という若さで幕を下ろすこととなります。

「山の神」と同級生!清田真央選手が世界陸上代表に名乗り

清田真央選手は、スズキ浜松AC所属の若手ランナーとして力を伸ばし、ロンドン世界陸上2017の女子マラソン日本代表に初選出されました。

選考レースとなった名古屋ウィメンズマラソン2017では、自身2度目のフルマラソンで積極的な走りを見せ、2時間23分47秒の自己ベストで日本人2位となり、代表入りを果たしました。

清田真央選手は、同じスズキ浜松ACに所属する安藤友香選手と同学年で、普段から互いに刺激し合う存在です。

また、高校時代は「山の神」として知られる神野大地選手と同期であり、学生時代から高いレベルの環境で競技に取り組んできました。

この名古屋ウィメンズ2017での好成績以降、自己ベストは更新されておらず、主要大会でも成績は伸び悩んでいます。

ロンドン世界陸上2017女子マラソンはどう展開したのか

レース当日の気温は19度。

ロンドンの街を舞台に行われた女子マラソンは、序盤のスローペースから終盤の急加速へと一変し、各国の戦略と対応力が試される展開となりました。

この章では、先頭集団の駆け引き日本勢の苦戦、そして勝負を制したアメリカ勢の動きを解説します。

超スローペースからの急変|35kmから一気に動いた先頭集団

ロンドン世界陸上2017女子マラソンは、気温19度の8月開催という条件の中、序盤は想定外の超スローペースで展開しました。

スタートから10km地点までを36分近くかかるゆったりとした流れで、先頭集団はアフリカ勢を中心に形成されました。

メイン集団では、キプラガト選手やキルワ選手といった世界トップランナーたちが互いに牽制し合い、動きが見られない状態が続きました。

しかし、35kmを過ぎた瞬間、アメリカのクラッグ選手が一気に仕掛け、レースは急激に動き出します。

35~40kmのラップは16分19秒と、それまでのペースからは考えられない急加速。

キプラガト選手やチェリモ選手も応戦し、激しい順位争いが繰り広げられました。

最終的にチェリモ選手が優勝を果たしましたが、終盤に突如として加速する展開は、夏のマラソン特有の厳しさを象徴していました。

日本勢はレースが動く前に脱落|厳しい展開に苦しむ

日本代表の3選手は、この急激な展開の変化に対応しきれず、レースが本格的に動き出す前に次々と集団から遅れてしまいました。

20kmを過ぎたあたりで、安藤友香選手と重友梨佐選手がともに集団についていけなくなり、中盤以降は苦しいレースとなります。

特に安藤友香選手は、自ら「気持ちが引いてしまった」と振り返るように、ペースの変化に対する心理的な動揺もあって、自分本来の走りを見失ってしまいました。

重友梨佐選手も序盤からリズムに乗りきれず、狭い道幅や路面の悪さ、他選手との接触などに気を取られ、後半は体力を温存しながらも追い上げができないままゴールを迎えました。

何度も集団に追いつく粘りを見せたのが清田真央選手です。

しかし35kmからの急激なペースアップには対応できず、最終的には先頭争いから脱落しました。

アメリカ勢が見せたタフなレース力と勝負強さ

一方、アメリカのクラッグ選手は、35km以降の勝負どころで一気にギアを上げ、強烈なスパートで集団を引き離しました。

クラッグ選手はマラソンの自己ベスト2時間27分3秒と目立つものではありませんが、タフなレースへの対応力に優れていました。

集団の流れを冷静に読み、ペースが上がるタイミングに合わせて一歩先に動いた姿勢は、まさに勝負師としての判断力の賜物です。

最後はチェリモ選手やキプラガト選手に競り負けたものの、堂々の銅メダルを獲得。

日本勢とは対照的に、スローペースからの一気の加速にも動じない対応力と、後半で順位を押し上げるタフさが光るレースでした。

ロンドン世界陸上2017女子マラソンから見えた課題と収穫

ロンドン世界陸上2017の女子マラソンでは、日本勢は入賞を逃し、世界との力の差が明確に浮き彫りとなりました。

個人の課題だけでなく、戦略や対応力の不足も明らかとなり、日本マラソン界には大きな課題が突きつけられました。

この章では、その教訓を踏まえ、東京2025世界陸上へどうつなげていくかを解説します。

入賞ゼロの屈辱が突きつけた日本の課題

ロンドン世界陸上2017の女子マラソンでは、清田真央選手が16位、安藤友香選手が17位、重友梨佐選手が27位と、日本勢は誰一人として入賞圏内に入ることができませんでした。

男女合わせてマラソンで入賞ゼロとなったのは、1995年大会以来の屈辱的な結果であり、日本マラソン界にとって大きな警鐘となりました。

期待された複数入賞の可能性も、レース展開にうまく対応できなかったことで潰えてしまい、あらためて世界との力の差が浮き彫りになった形です。

特に、夏のレースならではのスローペースからの急激な加速に対し、日本選手たちはレースが動く前に脱落してしまう場面が目立ちました。

このような結果は、選手の個人能力だけでなく、準備や戦略、環境整備も含めたチーム全体の課題を示しているといえるでしょう。

安藤友香の苦戦に見る、個人とメンタルの壁

安藤友香選手は、初マラソンで当時歴代4位のタイムを出し、日本女子マラソン界の新星として注目を集めました。

しかし、ロンドン世界陸上2017ではその勢いを再現できず、「気持ちが引いてしまった」という自身の言葉が象徴するように、精神面の課題が浮き彫りとなるレースになりました。

序盤は集団の動きを警戒しながら走っていましたが、ペースの揺さぶりに気持ちが揺らぎ、思い切ったレース運びができないまま終盤を迎えたと言います。

この経験は、単なる結果以上に、プレッシャーのかかる大舞台でどれだけ自分の力を発揮できるかという、日本選手に共通する大きな課題を物語っています。

安藤友香選手のような才能ある選手であっても、心の準備やレース経験の積み重ねなしには、真の実力は発揮されないという現実を突きつけたレースでした。

求められるのは戦略と対応力|未来への再構築

この大会では、クラッグ選手に代表されるアメリカ勢が後半勝負に強さを発揮し、銅メダルを獲得しました。

記録会では見劣りするような持ちタイムであっても、本番でしっかりと結果を出す力と、レース展開に柔軟に対応する戦略的な走りが目立ちました。

一方、日本勢は総じて準備されたペースでの走りに特化しており、展開が読めない状況や揺さぶりへの対応に苦しむ場面が多く見られました。

日本が世界で再び存在感を示すためには、個々の走力向上に加えて、実戦的なレースへの対応力、そしてどのような展開にも対応できるレース戦略の構築が不可欠です。

東京2025世界陸上に向けては、今回の課題をしっかりと分析し、選手だけでなく指導陣・サポート体制を含めた総合的な強化が求められています。

8年の時を経て安藤友香が挑む東京2025世界陸上へ

2017年のロンドンで悔しい結果を味わった安藤友香選手が、8年の時を経て東京2025世界陸上への出場を決めたことには、深い意味があります。

かつては気持ちの弱さに悩みながらも、自分に打ち勝つ努力を重ねてきた安藤友香選手が、再び世界の舞台に立つ。

その背景には、名古屋ウィメンズマラソン2025での優勝や、故障を乗り越えた粘り強い調整力、そして何よりも再挑戦への強い意志がありました。

東京という自国開催の舞台で、どんな走りを見せてくれるのか。

あの悔しさを知るランナーだからこそ、今度こそ世界に名を刻むレースが期待されます。

まとめ:ロンドン世界陸上2017女子マラソンから見えた日本の課題と希望

  • 安藤友香選手・重友梨佐選手・清田真央選手が日本代表として出場
  • レースは35km過ぎに急加速し、日本勢は対応できずに脱落
  • 東京2025世界陸上に向けて、戦略と対応力の強化が必須

ロンドン世界陸上2017女子マラソンは、序盤のスローペースから一転して終盤に急激な展開を迎えるレースとなりました。

日本代表として出場した3選手はいずれも個々に注目を集めましたが、入賞には届かず、課題が浮き彫りとなる結果に。

精神面・戦略面の両方において世界との差が明らかになりました。

2025年、再び世界の舞台に挑む安藤友香選手の走り、そして日本マラソン界の巻き返しに期待がかかります。

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