歴史に残る熱戦が繰り広げられた2024年パリオリンピック男子マラソン。
過酷なコースと駆け引きが重なる舞台で、日本代表3選手はそれぞれの想いを胸に42.195kmを駆け抜けました。
6位入賞という快挙、ベテランの存在感、そして初出場者の奮闘。
そのすべてが、日本マラソンの“今”を映し出しています。
さらに視線の先には、地元開催となる東京2025世界陸上が迫っています。
目次
パリオリンピック男子マラソン|日本代表3人の走りを振り返る
2024年のパリオリンピック男子マラソンでは、小山直城選手、赤﨑暁選手、大迫傑選手の3名が日本代表として出場しました。
厳しいコースと世界の強豪を相手に、それぞれがどんな走りを見せたのか。
この章では、3人の走りとその背景を解説します。
赤﨑暁が堂々の6位入賞。自己ベストで世界に存在感
赤﨑暁選手は、初めて出場したオリンピックの舞台で、世界の強豪選手を相手に堂々とした走りを見せました。
スタートからリズム良く集団に入り、15km地点を過ぎたあたりでは、起伏の激しいセクションに差し掛かっても落ち着いたペースを維持。
特に注目すべきは、上位勢が次々と脱落していく厳しいレース展開のなかで、赤﨑暁選手が積極的に前に出て、先頭集団にとどまり続けた点です。
一時はトップに立つ場面もあり、驚きと称賛の声が上がりました。
35kmを過ぎると、タミラト・トラ選手(エチオピア)が単独でスパートをかけ、赤﨑暁選手はその後ろで粘りの追走。
急勾配が続く終盤では、メダル圏内の選手たちに引き離されてしまいましたが、それでも最後まで集中を切らさず、ラストまで強い足取りで走り抜けました。
最終的に記録した2時間7分32秒は、自己記録を1分以上縮める快走であり、世界の舞台での確かな成長を証明する結果です。
マラソン代表を夢としてきた赤﨑暁選手にとって、初の大舞台での6位入賞は、大きな意味を持つ一日となったでしょう。
H3:大迫傑、二度目のオリンピックで見せた揺るがぬ執念
大迫傑選手は、自身2度目となるオリンピックのマラソンに出場し、オリンピック経験者としての落ち着いたレース運びを見せました。
東京オリンピックでは6位入賞を果たし、大会後は「ラストレース」と位置づけて一区切りをつけましたが、その後競技に復帰し、今回のパリ大会で再びオリンピックの舞台に立ちました。
レース序盤は中団に位置し、落ち着いた入りを見せていました。
25km地点では赤﨑暁選手からわずか2秒遅れという好位置につけていましたが、そこから少しずつ差が広がっていき、30kmでは35秒差、35kmでは1分12秒差となりました。
苦しい展開となるなかでも、大迫傑選手はリズムを守りながら最後まで集中力を切らさず、自分の走りを貫き通しました。
結果は2時間9分25秒の13位。
前回の東京オリンピックよりもタイムは向上したものの、順位としては後退する形となりました。
レース後のインタビューでは、「納得のいく順位ではなかったが、最後まで諦めずに走れたので良かった」と振り返り、ベテランらしい落ち着きのなかに競技への情熱をのぞかせました。
そして印象的だったのは、今後の目標について聞かれた際、「ロサンゼルスオリンピックに向けてまた頑張りたい」と、思わず口にした一言です。
一度は現役を退いた大迫傑選手が、再び世界の頂点を目指す道を歩み始めているという事実に、多くのファンが胸を打たれました。
2大会連続でオリンピックを完走したその背中は、今もなお、日本マラソン界にとって大きな希望であり続けています。
H3:初のオリンピックで小山直城が得た糧。苦しい展開のなかでつないだ未来
小山直城選手は、パリオリンピックが自身初のオリンピック出場となりました。
レース序盤は冷静に集団の中に身を置き、10km地点では13位につけるなど、良い位置でのレース運びを見せました。
しかし、18km付近に差し掛かる最初の上り坂で、先頭集団についていくことができず、そこからはペースを維持するのがやっとという厳しい展開になりました。
25km地点では34位まで順位を落とし、集団のなかで埋もれてしまう場面もありました。
それでも、「粘るだけだった」と本人が語ったように、苦しい気持ちを抱えながらも前を向き、最後まで集中力を切らさない姿勢が印象的でした。
ゴールでは一礼をしてレースを締めくくり、多くの応援への感謝を込める姿が、多くの人の心に残りました。
最終的な記録は2時間10分33秒で23位という結果に終わりましたが、小山直城選手にとっては、この経験自体が今後のキャリアにおける大きな糧となったことは間違いありません。
すでに東京2025世界陸上への出場がほぼ確定しており、この日の悔しさをどう成長に変えていくのか。
小山直城選手の“次なる挑戦”に期待が集まります。
H2:パリオリンピックが浮き彫りにした“日本男子マラソンの現在地”
レース展開や結果からは、日本マラソン界の課題と可能性が鮮明に浮かび上がりました。
過酷なコースにどう立ち向かい、何を残せたのか。
それぞれの走りに、日本代表の現在地が表れています。
この章では、レース全体の流れと3選手のパフォーマンスを通じて、その実力と課題を解説します。
H3:過酷なコースがもたらした“サバイバルレース”
パリオリンピックの男子マラソンは、「オリンピック史上最も過酷」とも評されたコースが選手たちに重くのしかかりました。
コースの特徴は15km以降に待ち受ける長く続くアップダウンの連続です。
特に30km以降に訪れる急勾配の坂は、各国の有力選手たちを苦しめ、途中棄権やペースダウンが相次ぐ“サバイバルレース”の様相を呈していました。
こうした厳しい条件下では、単純なスピードよりも「順位を取る走り」が求められ、いかに自分のペースを崩さずに走り切るかが勝敗を分ける要因となります。
日本代表3選手もそれぞれの対応力を見せましたが、特に赤﨑暁選手は、事前からアップダウン対策に重点を置いたトレーニングを積み重ねており、その成果をレースで見事に発揮しました。
一方で、大迫傑選手や小山直城選手は、坂のセクションでやや力を使い過ぎた影響もあり、後半の粘りに差が出る形となりました。
今回のレースは、暑さや坂道といった日本マラソン界にとって永遠の課題に対し、どこまで対応できるかが問われた一戦でもありました。
上位入賞を目指すうえで、「走力」だけではなく、「適応力」や「戦術眼」といった要素の重要性を再確認させられる大会となったのです。
H3:赤﨑暁の走りに見えた希望、他2人の課題も浮き彫りに
赤﨑暁選手の6位入賞は、日本マラソン界にとって明るい希望の光となりました。
初出場でありながら、序盤から積極的に前方でレースを展開し、さらに自らトップに立つ場面も見せるなど、その大胆さと落ち着きのバランスは高く評価されました。
特に注目すべきは、難コースに対する事前準備が的確であった点です。
赤﨑暁選手は、アップダウン対策に真剣に取り組み、自信を持って本番を迎えていたことが、レース内容にそのまま表れていました。
一方、大迫傑選手はレース中盤までは粘りを見せたものの、上り坂でエネルギーを多く消耗してしまい、後半はやや厳しい展開に。
それでもベテランらしい集中力を見せ、13位でフィニッシュし、貴重な経験値を積み上げる姿勢を崩しませんでした。
小山直城選手は、中盤の上りで遅れを取ったものの、そこから順位を徐々に上げ23位でゴールしており、世界大会における初の挑戦としては一定の成果を残したといえるでしょう。
この三者三様の結果は、日本代表が直面している「個々の強みと弱点」の明確な写し鏡でもあります。
若手の台頭、ベテランの維持、そして初出場選手の経験。
それぞれの立場から得た課題と収穫が、今後の日本マラソン強化のヒントとなることは間違いありません。
H2:東京2025世界陸上へ|この経験はどう活かされるか
パリでの走りを経て、小山直城選手は再び世界の舞台に挑みます。
一方で、新たに代表に選ばれた吉田祐也選手と近藤亮太選手にも大きな期待がかかります。
東京開催となる次の世界陸上で、日本マラソンはどこまで進化できるのか。
この章では、代表3人の展望と、地元開催に向けた日本勢の可能性を解説します。
H3:小山直城は東京2025世界陸上でも代表に。パリの経験が鍵になる
小山直城選手は、パリオリンピックに続いて東京2025世界陸上でも男子マラソン日本代表に選出される見込みであり、唯一の連続出場者として注目が集まっています。
パリでは23位という成績にとどまりましたが、オリンピックという独特の空気の中、世界最高峰の選手たちと競り合ったレースは、本人が「この経験は本当に今後に役に立つ」と語るほど大きな意味を持っています。
特に、18km付近の上り坂で先頭集団から離れてしまった悔しさや、その後の苦しい展開を乗り越えて最後まで走り切ったことは、今後のレース展開に対する準備や戦略に直結します。
東京2025世界陸上のマラソンコースは、夏の暑さと湿度が想定されており、レースを通じての体力配分や集団との駆け引きが勝敗を分ける重要な要素となるでしょう。
小山直城選手はパリでの反省を踏まえ、「再びこの舞台に戻ってくる」と意気込みを語っていました。
東京2025世界陸上では、そうした積み重ねた経験を武器に、より攻めの姿勢でレースを組み立てることが期待されています。
唯一のオリンピック経験者として、新たなチームの中でどのような走りを見せるのか、日本代表の“軸”としての存在感が問われる大会になりそうです。
H3:新代表の吉田祐也・近藤亮太にも注目
東京2025世界陸上では、小山直城選手に加え、新たに吉田祐也選手と近藤亮太選手が男子マラソン日本代表に選ばれました。
いずれもフルマラソンにおける高いパフォーマンスを武器に代表入りを果たしており、今回が初の世界大会出場となります。
吉田祐也選手は、2024年の福岡国際マラソンで日本歴代3位となる2時間5分16秒をマークし、大きな注目を集めました。
このレースでは、終盤のスパートでライバルを突き放す勝負強さが際立ち、さらに序盤から中盤にかけてはペースを大きく乱さない安定感も光りました。
こうしたレース展開のバランスの良さは、東京2025世界陸上のような国際大会においても大きな武器となるはずです。
一方、近藤亮太選手は2025年の大阪マラソンで2時間5分39秒の自己ベストを記録し、鮮烈な印象を残しました。
初マラソンとは思えないほどの落ち着いたレース運びを見せ、前半から冷静に集団に入りながら、40km以降にギアを上げて海外勢に迫る積極的な走りを披露しました。
精神面の強さと大胆な戦術が融合した走りは、世界大会でも通用するポテンシャルを感じさせるものであり、今後の成長が非常に楽しみな存在です。
ただし、2人にとって世界大会の舞台は未知の領域です。
パリでの日本勢の結果が示したように、オリンピックや世界陸上では“記録”ではなく“順位”を取りに行くための戦略が不可欠になります。
国内での走りがそのまま通用するわけではなく、国際大会ならではの集団走や位置取り、気象への対応力など、新たな課題にも直面するでしょう。
小山直城選手が経験者としてチームを引っ張る一方で、吉田祐也選手と近藤亮太選手が新風を吹き込む構図は、東京2025のチーム日本にとって理想的なバランスともいえます。
彼らがどんな走りを見せるのか、注目が高まります。
H3:“入賞からメダルへ”が問われる東京大会
パリオリンピックで赤﨑暁選手が6位入賞を果たしたことは、日本マラソン界にとって大きな前進でした。
しかし、地元で開催される東京2025世界陸上では、「入賞」だけではなく「メダル獲得」が問われる舞台となります。
ホーム開催ならではのプレッシャーと期待のなかで、日本勢がどのような走りを見せるかは、競技力のみならず戦術と精神力が試される戦いになるでしょう。
東京2025世界陸上のマラソンは、気温・湿度ともに厳しい夏の条件が予想されており、“我慢比べ”のレース展開になる可能性が高いです。
そうしたなかで、誰がいつ飛び出すのか、集団から離れるタイミングはどうなるのか、さまざまな駆け引きが繰り広げられることが予想されます。
パリオリンピックで経験を積んだ小山直城選手や、大きなポテンシャルを秘めた新代表たちが、どのように対応するかが注目されます。
「あと一歩でメダルに届くかもしれない」という空気が漂うなか、攻めるのか守るのか、各選手の判断が命運を分ける大会になるはずです。
赤﨑暁選手がパリオリンピックで見せたような、“世界に挑む姿勢”が、日本全体の底上げにつながるのは間違いありません。
東京で真の躍進を果たすためには、これまでの経験をチームとしてどう活かせるかがカギとなります。
まとめ:日本男子マラソンの希望と課題が交差した、パリから東京への42.195km
- 赤﨑暁選手がオリンピック初出場で6位入賞の快走
- 大迫傑選手は13位で完走、次の挑戦への意欲を示す
- 小山直城選手は経験を糧に、東京2025世界陸上での活躍に期待
パリオリンピック男子マラソンでは、日本代表3選手がそれぞれの個性を発揮し、確かな存在感を残しました。
赤﨑暁選手の快走は希望を、ベテラン・大迫傑選手の姿勢は背中で語るメッセージを、そして小山直城選手の粘りは未来への可能性を示しました。
地元で開催される東京2025世界陸上に向けて、日本マラソン界がどこまで進化を遂げるのか。
その歩みから目が離せません。